家族ではじめる!入門用望遠鏡の選び方と簡単な使い方
天体観測に興味をお持ちになり、「そろそろ望遠鏡が欲しいな」とお考えになるご家庭も多いことと思います。お子様と一緒に、月や星をもっと近くで見てみたいという気持ちは、とても素敵なことですね。
しかし、望遠鏡と聞くと、種類がたくさんあって難しそう、値段が高そう、使い方が分からないといった心配も出てくるかもしれません。この記事では、天体観測がはじめてのご家族向けに、入門用望遠鏡の選び方と、買ってからすぐに試せる簡単な使い方をご紹介します。
入門用望遠鏡を選ぶための大切なポイント
まず、どのような望遠鏡を選べば良いのでしょうか。ここでは、ご家族で使う入門機として重視したいポイントをお伝えします。
ポイント1:扱いやすさと安全性
小さなお子様と一緒に使うことを考えると、組み立てが簡単で、操作がシンプルであることはとても重要です。複雑な組み立てや微調整が必要なものより、箱から出して比較的すぐに使えるものがおすすめです。また、軽量で持ち運びやすいものなら、ベランダや庭への移動も楽になります。望遠鏡本体や三脚に不安定な部分がないか、転倒の危険性はないかなども確認しましょう。
ポイント2:性能よりも「見えること」の実感
望遠鏡の性能を示す数値には、倍率や口径など様々なものがあります。初心者の場合、「高い倍率で見たい」と思いがちですが、実は倍率が高すぎると視野が狭くなり、手ブレの影響も受けやすくなるため、天体を見つけるのがかえって難しくなります。
それよりも大切なのは、「口径」と呼ばれる対物レンズや反射鏡の直径です。口径が大きいほど、より多くの光を集めることができるため、星が明るく見えたり、肉眼では見えない微かな星雲などが見やすくなったりします。入門用としては、口径60mm~80mm程度のものが手軽で良いでしょう。まずは「よく見える」という実感を得ることが、楽しさにつながります。
ポイント3:架台の種類にも注目
望遠鏡を支える台を「架台」といいます。架台には大きく分けて「経緯台(けいいだい)」と「赤道儀(せきどうぎ)」があります。
- 経緯台: 上下左右にシンプルに動かせる架台です。カメラの三脚のように直感的に操作できるため、天体を導入しやすく、初心者の方やお子様でも扱いやすいのが特徴です。ただし、星は時間の経過とともに動いていくため、追いかけるにはこまめな操作が必要です。
- 赤道儀: 星の動きに合わせて軸を調整することで、比較的楽に天体を視野の中に留めておける架台です。本格的な観測や天体写真に向いていますが、設置に手間がかかったり、扱いが難しかったりします。
ご家族で手軽に楽しむなら、まずは経緯台タイプの望遠鏡がおすすめです。
ポイント4:無理のない価格帯で選ぶ
入門用望遠鏡は、数千円から数万円まで幅広い価格帯のものがあります。最初は高価なものを選ぶ必要はありません。1万円~3万円程度の価格帯でも、月面のクレーターや木星の縞模様、土星の環など、基本的な天体を楽しむのに十分な性能を持った望遠鏡が見つかります。まずは手頃な価格帯から始めて、慣れてきたらより高性能な望遠鏡を検討するのも良いでしょう。
電気店やカメラ店、オンラインストアなどで、実際に商品の説明やレビューを見ながら検討してみてください。
はじめての望遠鏡で天体を見てみよう
望遠鏡を手に入れたら、さっそく夜空に向けてみましょう。最初は難しく考えず、明るくて見つけやすい天体から始めるのがおすすめです。
最初は何を見る? 月や明るい惑星がおすすめ
望遠鏡を使うのがはじめてなら、何よりもまず「月」を見てみましょう。月は明るく大きく見えるので、望遠鏡を向けるのも簡単です。表面のクレーターや模様がはっきり見え、肉眼で見るのとは全く違う迫力があります。お子様もきっとその姿に夢中になるはずです。
月の他にも、木星や土星のような明るい惑星も良い目標です。木星の縞模様や、土星の美しい環は、倍率が高くなくても見ることができます。
望遠鏡を準備する
- 組み立て: 説明書を見ながら、丁寧に組み立てます。入門用は簡単なものが多いですが、焦らず確認しながら行いましょう。
- 安全な場所に設置: 望遠鏡を設置する場所は、水平で安定した場所を選びます。転倒しないよう、三脚はしっかりと開き、固定します。夜間の観測は周囲が暗いので、つまづいたりしないよう足元に注意しましょう。
- ファインダーを調整する: 多くの望遠鏡には、「ファインダー」という小さな望遠鏡がついています。これは、広い範囲を映して目的の天体を見つけやすくするためのものです。昼間のうちに、遠くの景色(電柱や建物の角など動かないもの)に望遠鏡を向けてピントを合わせ、ファインダーの中心にその目標が来るように調整しておくと、夜の観測が楽になります。
実際に覗いてみよう
- 肉眼で目標を探す: まず、肉眼で空を見上げて、今日見たい天体(月など)がどこにあるかを確認します。
- ファインダーで目標を捉える: 確認した天体の方向に望遠鏡を向け、ファインダーを覗いて、その天体がファインダーの中心に入るように調整します。
- 低倍率の接眼レンズで覗く: 望遠鏡本体の接眼レンズを覗きます。最初は一番倍率の低い(焦点距離の長い)接眼レンズを取り付けてください。視野が広く、天体を見つけやすいためです。
- ピントを合わせる: ピント調整つまみを回して、天体がはっきり見えるように調整します。お子様が使う場合は、大人が最初にだいたいのピントを合わせてあげてから、お子様自身に微調整させてみるのも良いでしょう。
- 天体を追尾する: 星は空をゆっくり動いていきます。視野から外れてきたら、経緯台のハンドルなどを操作して、天体が視野の中央に来るように追尾します。
- 慣れてきたら高倍率に: 低倍率で天体を捉えられたら、次は倍率の高い(焦点距離の短い)接眼レンズに交換してみましょう。さらに大きく見えますが、視野は狭くなり、追尾も難しくなります。
望遠鏡を使う上での大切な注意点
- 絶対に太陽を見ないでください。 望遠鏡で太陽を見ると、目を失明する危険があります。昼間に誤って太陽に望遠鏡を向けないよう、保管場所にも注意が必要です。太陽観測専用のフィルターを使用する場合を除き、昼間の太陽には絶対に望遠鏡を向けないでください。
- 無理な体勢にならない。 特に三脚を使う場合、バランスを崩して転倒したり、望遠鏡を落としたりしないように注意しましょう。
- 順番に覗く。 ご家族で見る際は、誰が次に覗くかなど、順番を決めておくとスムーズです。小さなお子様の場合は、大人が抱きかかえるなど、安全な体勢で見せてあげましょう。
望遠鏡での観察をさらに楽しむには
望遠鏡で天体を見ることに慣れてきたら、以下のような方法で楽しみを広げることもできます。
- 星図やアプリを活用する: 今見ている星や、次に見たい天体がどこにあるかを知るために、星図や天体観測アプリを活用しましょう。
- 観察記録をつける: 見た天体の名前や、いつ、どのように見えたかなどを簡単なノートに記録してみましょう。絵を描いてみるのもお子様にとっては良い経験になります。
- 天体について調べる: 見た月や惑星がどのような天体なのか、図鑑やインターネットで一緒に調べてみましょう。学びが深まります。
まとめ
はじめての望遠鏡選びは、家族で楽しむことを一番に考えて、扱いやすさや価格帯、そして「よく見えること」を実感できるものを選ぶのがおすすめです。月や明るい惑星から始めて、望遠鏡を通した迫力ある姿をお子様と一緒に体験してみてください。
望遠鏡での天体観測は、ご家族にとって忘れられない素敵な時間になるはずです。この記事が、皆さんの「はじめての星空」体験の一助となれば幸いです。